コラム

清水なお子さんのこと


「こんにちわ~。こんな遠いところまで」
爽やかに晴れた4月の休日。
清水さんはその空に負けないぐらい、明るい笑顔で迎えてくれました。
 
清水さん
 
清水さんが住んでいるのは、京都から山陰本線に乗って嵯峨、嵐山を過ぎて間もない馬堀というところ。
保津川の渓谷をぬって走るトロッコ電車の、一方の起点になっているのどかな町です。
師匠である藤塚光男さんの住む亀岡とも、程近い距離のここに清水さんは3年前、独立して窯を持ちました。
 
カップ
 
藤塚さんといえば、古伊万里を思わせるしっとりと美しい染め付けで絶大な人気を持つ作家さん。
さぞ弟子入りは競争率が高かったのでは?
「いえ、いまは弟子入りしようとする人が少ないんです」
大学や訓練校を出た若い人は、すぐにひとりで、あるいは仲間と窯を持ち
師匠について修行しようと志す人は、もう本当に少ないとのこと。
それでも清水さんが弟子入りを選んだのは、意外にも染め付けを学びたかったからではなく
「もっとろくろを勉強したかったから」。
じつは、弟子入りするそのときまで、藤塚さんの名を知らなかったというのです。
でも、その幸運な出会いがあって、清水さんは弟子であった3年あまりのうちに
ろくろだけでなく、秀でた技術を学び
さらに作ったものが、お店から使い手。人の手から手へと渡って行く流れを学び
若くして実力ある女性陶芸家として、順調なスタートを切ることになりました。
 
皿
 
清水さんは、去年、母校の精華大学の先輩であり
独立後、一緒に窯を持ったパートナーの土井善男さんと結婚しました。
土井さんは、清水さんと同じく白磁と染め付けの作家さん。
「だから、いつも窯の場所の奪い合いなんです」と、笑いながら
土のこと、釉薬のこと、うつわのかたちや染め付けの絵柄のこと
並んでろくろを引きながら語り合い、日々、試行錯誤しながら
もの作りに励むふたりの様子ガ目に浮かびます。
「窯の温度や炊き方の管理は、彼の仕事」と、嬉しそうに話す清水さん。
彼女のいつも変わらぬ屈託のない笑顔と
やさしく心和ます染め付けは、そんな幸せな暮らしの背景があるからこそだと思えます。
 
ふたり
 
使いやすく、日々の食卓で愛されるうつわを目指す清水さん。
いちばんたのしいのは、新しい絵柄を考えて焼き上がって窯を開けたとき
うつわのかたちと絵柄がぴったり調和して、素敵に出来ていた瞬間だと言います。
染め付けの染料である呉須が、発色するのは窯で焼いてからのこと。
考えて絵付けをしても、思うイメージに上がらないことは多々あるとか。
逆に、絵柄が浮かばず悩んだとき、ふとほかのかたちのうつわに描いていた柄を
新しいかたちに転じてみると、思い掛けない新鮮なものにあがることもあるそうです。
まるでふたりの電気窯は、日々、新たな驚きを生みだす玉手箱のようにも思えて来ます。
 
窯
若く、きらきらと輝く可能性に満ちた清水さん。
そののびやかな感性で、これからも食卓にさわやかな風を届けてくれるでしょう。
 
染め付け飯わん

2004年4月訪問

→清水なお子さんの作品はこちら。

 

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