コラム

山脇將人さんのこと

山脇將人さんのこと


yamawaki

山脇さんは不思議な人です。
最初に、作品を見せに来てくれたのは2年ほど前のこと。
去年、ふたたびふらりと現れたときには
「誰だったっけ」と一瞬悩んだものの、
あ、あの時の、と思い出したとたん、
昔から知ってた近所の子のように、なじみの口調で話してしまう。
「久しぶりじゃん、どうしてた?」
とまでは言わないけれど、そんな感じ。
とくに饒舌でも、愛嬌がある訳でもなく
むしろ淡々として、見ようによっては態度がでかく
しかも強面である。のに、です。


山脇さんは、宮崎の人です。
宮崎というと、わたし世代はフェニックスの続く海岸線。
新婚旅行のメッカ(旧過ぎ)なんて連想してしまうのだけど、
彼の住む小林市は山の方で、先ごろ噴火した新燃岳を望む
緑の懐に抱かれたエリアです。

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その小林市で、山脇さんが高校生の頃、
うつわ好きで行動力ある母上が、そのころ誰も考えもしなかった
自宅ショップを始めました。

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宮崎県内、鹿児島など、買い付けに同行し、かいま見た焼きものの仕事場。
「かっこいい!」
純真な山脇少年には、それがとてもかっこ良く、近寄りがたく神聖なものに思えたそうです。
いつか、焼きものをやりたい。
思いを秘めつつ、高校卒業後、彼は美術の勉強に上京します。
1年間、基礎を学んだあと、いよいよ陶芸の道へ…。
と思いきや、彼は東京で焼きものとはまったく関係ないフリーターの生活を始めます。
心の底では「陶芸家になるんだ」と思いつつ
「半端な気持でやりたくなかったんです。腹をくくって始めたかった」。
思い定めた彼女はいるのに、人生を捧げる決断ができない
あるいは幸せにする自信が持てない状況?
違うか。

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ともあれ、フリーターをしながら暮https://party.ue.shopserve.jpらした東京で
美術館、建築物、イベントにお店…
やきものに限らず、心惹かれるあらゆるものをどん欲に見、吸収し続けました。
その間、初志を忘れず、自分にプレッシャーをかけるため、
周囲の人に「僕は、焼きものやになるんだ」と言い続けていたと言います。
なら、早くやればいいのに。そう思ってしまうけれど
もしかしたら彼に取っては必要な、インターバルだったのかもしれません。

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そして、7年経ったある日、
「こんなことやってる場合じゃない!」
と、彼はようやく行動に出ます。

25才。
山脇さんが選んだのは、陶芸教室でも訓練校でもなく
地元に帰って窯元に入るという、即実戦の道でした。

思いだけで、土に触れたこともなく、焼きもののできる行程も知らなかったという彼を
受け入れてくれたのが、粉引きを主とし、年に数回、薪窯で焼き締めを焼いて販売する「中霧陶園」。
陶芸を志す若い人を縛ることなく、早い独り立ちを促す窯元との幸運な出会いで
山脇さんは、土こねからろくろ、窯焚きまで
短期間でみっちり仕込まれます。
7年間の思いが堰を切ったように、爆発的なエネルギーで
山脇さんも焼きものに没頭したのでしょう。

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そして、2年で窯元から独立。
自宅の一角に窯を構え、自分の作品を作るようになり
人もモノも集まる東京で、作ったものを見てもらおうと
山脇さんはお店を回ることにします。
それは、近くに住み、いつも何かとアドバイスをくれていた
先輩陶芸家 増渕篤宥さんに学んだことでもありました。
そのとき、山脇さんの道順にPARTYも入っていたようです。

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初めて彼の作品を見た時の感想は
「上手ですね~」だった気がします。
ろくろのうまさに、シンプルできれいなかたち。
焼きものを始めてまだ数年と聞いてびっくり。
うまいなあ。…でも、何か足りない。なんだろう。
と、妙に親身に考え込んでしまったのは
いまにして思えば、永い助走を経て「神聖なる」焼きものの世界に飛び込んだ
山脇さんの意気込みが、一途な熱意が、淡々とした物腰であっても
そのまなざしから伝わっていたのかもしれません。

それから、2年ほど。
ある時は早割、ある時はバースデー割引を使って、
山脇さんは遠い宮崎から、「近所の子」みたいな何げなさでふらりと東京に現れます。
少しずつ、作品の幅も広がり、
時おり声をかける企画展にも、はいっ!と手を挙げて起立するように
素晴らしい意気込みで参加してくれます。
届くたくさんの作品は、いいと思うもの、いまひとつなものいろいろあるけれど
がむしゃらだけど清々しい、一生懸命さが伝わってきます。

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クリーム色のやわらかな粉引き、早春の野を思わせるやさしい灰釉
温かなツートーン、ちょっとスタイリッシュな銀彩…。
企画展や東京への来訪時、断片的にしか見ていない山脇さんの作品を一堂に見てみたい。
そして、たくさんの人に見てもらい、これからにつなげて欲しい。
そんなことを思い、この秋、山脇さんの初の個展を開かせてもらうことにしました。
持ち前の負けん気とガッツと、繊細な気持が込められた作品たちが
いま、彼のスタートラインに並びます。


2011年10月12日




愛犬カレン。
もの静かで賢い女の子のゴールデンです。
「ほんとはわたしの犬なのよ。あの子は反対したのにね」と,お母さんの香代子さん。

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やはりゴールデンレトリバーだった前の愛犬「デク」が死んで
新しい犬を飼うことを山脇さんは猛反対したそう。

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これがデク。
なのに…。その溺愛ぶりは、山脇さんのブログで。


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香代子さんが丹精しているお庭は
草花がのびのびと自然な姿で育って心地いい。
ここで時おり、山脇さんのうつわの展示会も催され、
近所の人たちが集まります。
庭やお宅のあちらこちらに、心惹かれるアンティークなどが何げなく置かれ
山脇さんの旧い物好きも、母上譲りなのがわかります。
うつわの使い勝手に対する、貴重なアドバイザーもお母さん。

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いま、主として使っている土は2種。
黒泥に鉄分の多い信楽を混ぜた土は黄色い粉引きに、
白く細かい信楽の粘土に、半磁器をたしたものは茶と黒のツートーンのシリーズに。

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半磁器にも挑戦中。

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同じ宮崎に住む杉尾信康さんの工房で。

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増渕さん(後ろ中央)の工房でバーベキュー。
神聖なる陶房で、いいのかなあ。
九州は、いま元気な陶芸家さんがたくさん。
交流も盛んで盛り上がっています。

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新燃岳を含む霧島連山。
山脇さんの家の近くから見える風景です。

→山脇將人さんの作品はこちら。

 

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